膝前十字靭帯損傷

膝には主に4つの靭帯が存在し、前十字靭帯(Anterior Crucial Ligament:ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靭帯(MCL)、外側側副靭帯(LCL)があります。

ACL損傷はスポーツ膝障害のなかでも頻度が高く、対人接触などによって直接的・間接的に強い外力が膝関節に加わり損傷する場合(外因的損傷)と、ジャンプの着地やステップ動作、急な方向転換など、接触しない減速動作によっても損傷する場合(内因的損傷)があります。

内因性損傷においてACL断裂がしやすいのは、膝関節を内側に捻った場合が最も多く、他に、膝関節を外側に捻った場合や膝関節が過度に伸ばされた場合があります。

ACLを断裂すると膝の不安定性が出現し、歩行中に膝崩れを生じます。また、ACL断裂を放置していると受傷後の経過の中で2次的障害(半月板損傷など)を生じる危険性が高くなり、将来的に変形性膝関節症を発症する確率が高いと言われています。

スポーツ復帰を希望する場合は、基本的に手術療法が必要となります(前十字靭帯損傷診療ガイドライン 改訂第2版 2012)。

膝ACL損傷手術後の理学療法

リハビリテーションは再建靭帯へのリスクを配慮し、術後のプロトコール(計画)に従って実施しますが、回復スピード、筋力、柔軟性といった機能や運動特性、特徴は異なります。

膝が内側に入る動作(Knee in Toe out:ニーイントゥアウト)を日常的に行なっていた結果、受傷に至った場合もあり、その場合は動作改善のためにエクササイズ・運動学習が必要となります。

 

機能障害因子の改善のために、患者様のお身体の状態・特徴を十分に考慮し、個々の原因を改善するためのオーダーメイドのリハビリメニューをご提案、実施します。

術後回復期(0〜8週)

術直後〜数週間は、手術の影響などに関節が腫れ、痛みなどの炎症症状が生じるため、アイシングや弾性包帯による圧迫により対応します。

炎症期には術創部に十分注意しながら膝蓋骨の動きや、皮膚の動きを良くするような徒手療法を実施します。また、ご自宅でもホームエクササイズとして行なっていきます。

 

膝関節周囲の筋力は受傷の影響により低下します。早期から安全な範囲で膝関節の運動を開始します。

膝関節の可動域制限、筋力低下に対するリハビリ以外にも、患部以外の筋力が低下しない様に患部外エクササイズや、膝に負担のかからない体幹エクササイズを実施します。

 

動きの動作開始時期(9〜14週)

炎症症状・膝関節可動域の改善に従い、非荷重下での運動と併用し、荷重下での運動を行います。

この時期は、スポーツの基本動作であるスクワット、ランジ、サイドランジなどのエクササイズを行います。

膝関節可動域が不十分な場合、可動域を改善するための軟部組織リリース、ストレッチなどを継続していきます。

     

基本的な動作を評価し、各個人での動作パターンの修正を行なっていきます。

また、医師の指示の基、固定式自転車(エアロバイク)、ジョギングを開始します。

復帰準備期(15〜20週)

筋力の回復(健側と比較して60%以上)と、中等度のスピードでのスポーツ動作を行います。この時期より両脚でのジャンプ動作が許可されます。股関節と膝関節を協調的に使い、着地時の衝撃を上手に吸収出来るようにトレーニングをしていきます。ジャンプの着地動作が獲得出来たら、前方・側方・回旋など多様なジャンプエクササイズに発展させていきます。バランスエクササイズではBOSUなどのトレーニング機器や、片脚でのバランスエクササイズも追加して、スポーツ復帰に備えます。

   

復帰前期(21〜24週)

筋力の回復(健側と比較して80%以上)と、トップスピードでのスポーツ動作を行います。この時期から片脚でのジャンプ動作が許可されます。両脚ジャンプと比べて、片脚ジャンプでは筋力・バランスもより必要とされます。安定した片脚ジャンプ、健側と同等の筋力回復を目標とします。

スポーツ選手の復帰時期は手術の方法・プロトコールの内容によって異なります。患者様の状態、競技特性に応じて復帰時期は異なります。

スポーツ復帰前には、関節可動域テスト、筋力テスト、動作テストなどを行い、スポーツ復帰の基準を満たしているかどうか判断します。