腰部椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の変性が進行し、外側の線維輪(せんいりん)の後方部分が断裂し,真ん中にある変性した髄核(ずいかく)が断裂部から後方に逸脱することによって、神経根、馬尾を圧迫し、疼痛、感覚低下、筋力低下、痺れなどを引き起こした状態です。

椎間板の変性は4段階(①髄核膨隆 ②髄核突出 ③髄核脱出 ④髄核分離)に分かれています。

症状の程度は個人差があり、最近の研究では、画像所見と症状が一致しないという報告もあります。画像所見では問題があるのに、症状がまったくない、ということがあるため、画像所見だけでなく、実際の症状を確認することが大切です。

腰部椎間板ヘルニアは、L4/5(第4腰椎と第5腰椎の間)が最も多く、次にL5/S1(第5腰椎と第1仙椎)が多く起きるといわれています。

男性の方が女性よりも椎間板ヘルニアになりやすく、20〜40歳代と働き盛りの年代の方に多いという報告があります。しかし、50〜60歳代の方でも椎間板ヘルニアになる方はいます。

症状が出る部位は、圧迫される部位によって異なります。例えば、L4/5(第4腰椎と第5腰椎の間)のヘルニアで片側の第5神経根の圧迫がある場合、母趾伸筋(足の親指をあげる筋肉)の筋力低下、母趾背側の感覚低下などが起こります。

馬尾と呼ばれる部位が圧迫されると、尿漏れや便漏れといった膀胱直腸障害や肛門付近の感覚低下、性機能低下などが起こります。この場合、緊急の除圧手術が必要です。

頻度は少ないですが、稀にL2/3(第2腰椎と第3腰椎の間)に起こる場合もあります。L2/3の片側のヘルニアの場合、大腿四頭筋の筋力低下、大腿内側の感覚低下が起こります。

腰部椎間板ヘルニアは、片側に髄核が飛び出す場合もあれば、真ん中に髄核が飛び出す場合もあります。真ん中に飛び出す正中ヘルニア”の場合、症状が両側にでることがあります。

腰椎椎間板ヘルニアの治療では、保存療法が第一選択となります。飛び出したヘルニアはサイズが大きいものは時間と共に小さくなることが報告されています。腰椎椎間板ヘルニアが自然に退縮する割合およびその時期を明確にした報告はないが、2〜3ヵ月で著明に退縮するヘルニアも少なくないといわれています(グレード1:腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン)。

椎間板に対する負荷は、良くない姿勢や身体の動かし方、習慣や環境、筋力不足、柔軟性低下、太り過ぎ、加齢などによって起こります。また、腰痛は身体機能・構造だけでなく、不安やストレスなどの心理面の問題でも引き起こされます。

腰部椎間板ヘルニアになる原因はさまざま、人それぞれ異なります。機能障害因子がどの程度あるのか、どういった機能が制限されているのか、問診・身体評価から見つけ出し、個々の患者様に合った理学療法を実施します。

腰椎椎間板ヘルニアの理学療法として、関節モビライゼーション、エクササイズ・運動再学習、姿勢修正エクササイズ、日常生活指導などがあります。

腰部椎間板ヘルニアの理学療法

1. 関節モビライゼーション

関節など柔軟性が問題となっている場合、マッサージ・ストレッチ・関節モビライゼーションなどを実施します。椎間孔の狭小化に対しては、椎間孔を拡大する関節モビライゼーションを実施します。また、ホームエクササイズとして、椎間孔を拡大するエクササイズを実施します。

 

2. エクササイズ・運動再学習

筋力低下、協調性低下がある場合、正しい動作を修得するための運動再学習、筋力を改善するためのエクササイズを実施します。

腰部の深部筋の活動性が低下してる場合、深部筋(腹横筋・多裂筋など)の活動を向上するために、深部筋エクササイズを実施します。次に、脊椎をコントロールするための静的制御エクササイズ・動的制御エクササイズなどを段階的に行います。

動作の修正では、下から物を持ち上げる動作(リフティング)、物を上に持ち上げる動作など、患者様が日常や仕事で普段している動作を中心に練習していきます。

3. 姿勢修正エクササイズ

腰痛を有する患者様の多くは、不適切な姿勢や動作が習慣となっています。姿勢が問題となっている場合、負担のかからない姿勢を学習していく必要があります。

急性期の腰痛では、疼痛を回避するための姿勢 ”疼痛回避姿勢” をしている場合があります。

疼痛回避姿勢は、損傷部位に負担をかけずに治癒を促進するのに必要な姿勢といえます。

損傷部位の改善に伴い、姿勢を少しずつ修正していきます。損傷部位が改善しているにもかかわらず、疼痛回避姿勢を継続している場合があります。この場合、二次的な機能障害を起こしますので、早期から痛みのでない範囲で姿勢を修正していきます。

腰痛患者様の多くは、正しい姿勢を認識できない関節位置覚の異常が生じています。この場合、口頭指示だけでは姿勢を修正することが難しいため、徒手誘導、自主トレ用紙などを同時に用いることで、不適切な姿勢を修正していきます。

4. 日常生活指導

急性期では、痛みがでないように痛みを避けた姿勢や動作をすることがあります。これを疼痛回避姿勢、疼痛回避動作といいます。

疼痛回避姿勢・動作は、損傷部位に負担をかけずに治癒を促進するために必要です。理学療法士から疼痛回避動作を指導する場合もあります。

例えば、「寝返りで痛い場合は抱き枕などを抱いて丸太のように寝返ってください」とアドバイスすることがあります。

*あくまでも急性期の対応です。急性期が過ぎたら、寝返り動作を再獲得する必要があります。

疼痛回避姿勢・動作は、損傷部位の改善に伴い、少しずつ修正していきます。

損傷部位が改善しているにもかかわらず疼痛回避姿勢・動作を継続していると、二次的な機能障害を引き起こしたり、慢性疼痛へ移行してしまいます。

理学療法士が適切なタイミングで、姿勢・動作の再学習を促していきます。