肩関節は肩甲骨、上腕骨、鎖骨という骨で構成されています。肩甲骨と上腕骨から構成される関節を肩甲上腕関節と言い、この関節に脱臼が生じる疾患を肩関節脱臼と言います。しかし、肩関節の受け皿(関節窩)が狭く、とても可動性の高い関節ですが、解剖学的に非常に不安定な関節のため、脱臼を生じやすい関節だと言われています。肩関節脱臼の大半は前方への脱臼が大半を占めます。

 

肩関節脱臼は腕を大きく後ろに引かれて転倒した場合や、コンタクトスポーツ(ラグビー、アメフト、柔道など)によって発生することが多く、その後は適切な治療が行われないと再脱臼しやすくなります。脱臼の回数が増えるほど、弱い外力でも脱臼しやすくなり、反復性肩関節脱臼へと移行していきます。日常的に脱臼を経験している場合は、頭の後ろに手を組んだり、手を後ろについたりなどの日常生活動作に注意しなければなりません。

初回脱臼後は整復を行い約2-3週間固定し、組織の回復を待ちます。固定除去後は、肩関節のリハビリを行い筋力、関節可動域、動作の改善に努めます。しかし、組織のゆるみが残存したり、脱臼もしくは整復時に周囲の組織を傷つけているとリハビリを行っても脱臼の症状が変わらない、悪化してしまう場合もあります。日常生活に制限が生じる場合、肩関節に負担のかかる運動を継続したい場合などには手術を検討します。

手術方法には、バンカート法とブリストー法などがあります。

バンカート法とは関節の構造を解剖学的に修復する手術方法です。この手術の利点として解剖学的に修復するので日常生活で想定しうる運動では関節の不安定性は残存しにくいとされています。しかし、コンタクトスポーツなどで大きな外力が生じる場合では脱臼予防機能が乏しいという欠点もあります。

ブリストー法は筋肉が付着した状態で肩甲骨の骨(烏口突起)を切除し、肩関節が脱臼しない位置に移行して脱臼しないようにする方法です。バンカート法に比べ脱臼防止効果が高いと言われていますが、骨を移植しており関節可動域制限が残存しやすいと言われています。

反復性肩関節脱臼術後リハビリテーション

リハビリテーションでは手術によって修復した組織へのストレスを考慮しプロトコール(計画)に従って実施します。

一般的には術後3週までは修復した組織を保護するため、肩関節の装具を着用し、肩関節運動は極力控えます。リハビリでは臥位姿勢において肩に負担のかからない方法を提案し、肩甲帯、脊椎、体幹などの柔軟性低下、筋力低下を予防するような運動を指導致します。また振り子運動を行い、肩関節のリラクゼーションを図ります。

  

術後4週から肩関節の装具が外れ、修復した組織にストレスがかからないように注意しながら可動域訓練を開始します。肩関節は疼痛が生じやすいので初回は肩関節に負担の少ない可動範囲から始め、慣れてきた可動範囲を増やしていきます。

術後6週より自動運動が許可され肩甲骨周囲筋の促通、タオルスライドエクササイズを開始します。自動運動にて痛みがなければ、軽負荷での抵抗運動を開始していきます。輪ゴム、セラバンドを使用し徐々に負荷、可動域を広げていきます。

   

術後8週以降、アウターマッスルの訓練開始となります。肩関節の状態を考慮し、荷重下での四つ這いエクササイズなどの負荷の高い運動を開始していきます。

腕立て伏せなどの肩関節前面に高い負荷が生じる運動に関しては安全に行えるようにフォームを確認しながら行います。

術後12週よりノンコンタクト動作を開始します。ジョギングから開始し、徐々に運動負荷を増やし競技復帰に向けたダッシュ系、アジリティー系のスポーツ活動に発展させていきます。

 

術後24週以降、コンタクトスポーツの復帰を目標にします。コンタクトプレーではタックル動作や、受け身時の動作について確認し、反復練習を行い、徐々に実戦形式の練習に復帰していきます。

スポーツ選手の復帰時期は手術時の関節の状態、手術の方法、プロトコールの内容によって異なります。患者様の状態、競技特性に応じても復帰時期は異なってきます。

スポーツ復帰前には、動作テスト、筋力テスト、可動域テストなどを行い、スポーツ復帰の基準を満たしているかどうか判断します。