肩関節周囲炎

肩関節周囲炎の一般的な病態は、明らかな外傷や誘因がなく肩の経年変化によって肩関節周囲組織に炎症が起きることが原因と考えられています。特徴的な症状として、痛み(夜間時痛、安静時痛、運動時痛)や可動域制限(リーチ動作制限、結髪・洗髪動作制限、結帯動作制限など)があります。徴候としてインピンジメント徴候があり、約90%は痛み、可動域制限の順で症状が進行すると言われています。

炎症が改善し症状も自然に治癒することも多いと言われていますが、症状が遷延化することもあります。その為、適切な時期に適切な治療が必要となります。また症状には個人差があり必要な治療も異なります。

○肩関節周囲炎の一般的な症状の経過

      急性期:安静時や夜間時にも強い痛みがある。痛みによる運動制限が強い。

   ↓

  拘縮期:関節拘縮による痛みや運動制限が強い。

 

組織の炎症

疼痛・可動域制限

炎症の再燃

疼痛・可動域制限増悪

長期の不動や活動制限

関節拘縮

○肩関節の解剖学的特徴

肩峰下関節(第2肩関節)には肩峰下腔という狭い隙間があり、肩峰下滑液包や棘上筋、上腕二頭筋長頭腱といった組織が走行しています。腕を上げる際に、この隙間が狭くなり組織が挟み込まれることで痛みを伴うことがあります。これを肩峰下インピンジメントと呼びます。

肩峰下インピンジメントのテストには、Neer test、Hawkins testなどがあります。また腕を上げる際や下げる際、60~120°の間で痛みが生じることをPainful arc(有痛弧)といいます。繰り返しストレスが加わることにより、組織の損傷や症状の慢性化の原因となります。

○肩関節周囲炎の治療

急性期

急性期の対応としては、痛みのコントロールが中心となります。この時期の積極的な介入は予後に悪影響を及ぼすとの報告もあり、基本的には)安静時の姿勢指導)日常生活指導を行い、日常生活上での負担を減らすようにします。また当院では痛みが強い場合には服薬や物理療法によるコントロールも実施しています。

痛みの伴う動作は避けるようにしますが、痛みの出ない範囲でのストレッチや徒手的介入は効果があるとも言われているため、疼痛内での日常生活動作は無理のない範囲で行うようにします。

 

1)安静時の姿勢

夜間時も痛みが強い場合にはとくに、安静時の姿勢も注意する必要があります。姿勢不良によって負担がかかり続けていることもあります。

 

 

2)日常生活指導

痛みが強い場合には、なるべく腕を横方向や後方向に動かすのではなく体の正面で使うようにします。また腕を90°以上まで挙げる動作は避け、90°以下で使うようにします。

<良くない動作の例>

 

 

 

拘縮期

拘縮期の対応としては、理学療法が中心となります。この時期の理学療法としては、)モビライゼーション)ストレッチ)運動療法を行い、関節の可動性や軟部組織の柔軟性改善を行っていきます。しかし過度の運動負荷は痛みを誘発することもあるため、状態に合わせた強度で行う必要があります。

理学療法の目標としては、まず日常生活上で制限を受けやすい動作の獲得を目標とします。それぞれの動作には最低限必要な関節可動域があります。しかし、肩関節以外の関節の可動性や代償動作の有無によって異なるため必要角度には個人差があります。

 

≪日常生活に必要な肩関節可動域≫

屈曲/外転 内旋/外旋
整髪動作 屈曲70°以上、外転110°以上 外旋30°以上
洗体・洗髪動作 屈曲70°以上 内外旋40~60°以上
更衣動作 屈曲70°以上、外転25°以上 内外旋45°以上
結帯動作 外転70°以上 内旋40°以上

 

≪容易に行える角度≫

・結髪・整髪動作:屈曲130°以上、外転100~120°以上、外旋60°以上

・結帯動作:外転90°以上、内旋50~60°以上

 

1)モビライゼーション

ストレッチは筋の伸張性を改善する目的で行うのに対して、モビライゼーションは関節周囲の軟部組織の柔軟性改善や関節の可動性改善を目的として行います。疼痛や可動域制限の影響で、肩甲骨や上腕骨のアライメント不良をとることも多くあります。アライメント不良や関節の可動性がない状態でのストレッチや運動は、疼痛を誘発するなど効果的な治療とならないことがあります。

 

2)肩・背中のストレッチ

肩の運動に作用する筋群は、肩甲骨、鎖骨、脊柱といった体幹側から腕側(上腕骨)に付着しています。そのため、脊柱(頸椎、胸椎)~上腕にかけて柔軟性を改善する必要があります。

 

3)運動療法

徒手的に関節の可動域を改善、筋の柔軟性を改善させるだけでなく、自動的に正しく関節を動かしていく必要があります。関節の動きだけ改善しても、動かし方や使い方が良くないことで再発や治癒の遅延につながることもあります。その為、正しく関節運動が行えるように筋力強化や筋のコントロールも修正していきます。リハビリテーションでは、症状や状態に合わせて必要な運動を紹介していきます。

●棒を用いた運動

 

●ボールを用いた運動                      ●モーターコントロール修正