2020年の東京オリンピックの正式種目に採用されたことで、少しずつ注目を集めている空手道。

実は空手道は大きく分けて「伝統派(寸止め)」と「フルコンタクト」の2つに分類されます。今回は、前者の伝統派空手道の紹介をしていきます。

 

1.  空手道とその競技種目

空手道とは、世界で13000万人以上、国内でも200万人以上の愛好者がいると言われています。

打撃技を特徴とし、「形(かた」と「組手(くみて)」の2種目からなる琉球王国発祥の武道です。

 

とは、相手の動きを想定して一連の技の動きを繰り出すもので、技の正確さや力強さなどを競う競技です。

 

 

組手とは、相対する2人の選手が自由に攻め合い、突き、蹴りを早く、正確に極(き)めるかを競う競技です。

 

空手道というと殴り・蹴り合いのイメージが強いかと思われますが、寸止めと言って、直接打撃せずに寸前で止めるためにダメージは大きくなく、重篤な外傷は少ないようです。安全性を重視したいニーズから、平成24年度からの中学校武道必修化において、公立中学校120校で空手道は採用されました

どのようなスポーツや武道でも外傷や怪我などの傷害、誤ったフォームによる障害は起こりうります。全日本大会での障害発生状況では、打撲・出血・ねんざなどの「傷害」が報告されていますが、今回は組手競技における「障害」について少し考察してみます。

 

2.  空手道でケガをしやすいステップ動作とその対応策

空手道の組手競技では、素早く身体を移動することが、試合を有利にさせるため、基本的にはフットワークでステップを使います。そのため、バスケットボールやサッカーなどのメジャーな競技と同様に下半身の筋力、バランス力、さらにしなやかなで大きな動きを作り出すために柔軟性が求められます。以下にそれらの能力が不足した場合に何が起こるかを考えていきます。

 

ステップ動作

組手競技中は、常に小刻みに跳躍し続けるステップ動作を使用するため、下半身には体重以上の負担がかかり続けます。特に女性選手を中心に以下の図のような内股のフォームが見られる場合があります。膝が内を向き、つま先が外を向く動作(knee in toe outを繰り返すと、膝の靭帯にストレスがかかりやすく、さらに対人競技であることから予測できない動きも重なり、膝の障害のリスクも高まります。

 

膝が内側に入るような動作(Knee in Toe out)では膝関節に捻れのストレスが生じやすく、膝関節の痛みの原因になりやすいため、スクワット(下図)などの基礎的な動作練習を行います。

体幹・股関節周囲筋の筋力低下や協調性低下がある場合は、個別にエクササイズを行います。

これらの基本的なスポーツ動作を評価し、個人の動きのパターンに合わせてリハビリ内容を変更し、修正していきます。

 

まとめ

空手道は2020年東京オリンピックに採用されたものの、怪我や障害についての報告や研究は十分になされていないのが現状です。

痛み等の症状がなくなっただけでは競技に必要な身体機能は不十分であり、その状態で復帰してしまうと再び症状が出てしまう原因になってしまいます。

当院のリハビリテーションでは、スポーツ復帰に向けての段階的なストレッチ・運動処方、必要な動作練習・指導を行います。

空手道経験のあるスタッフやスポーツ疾患に非常に経験を積んだセラピストが対応させていただきます。

リハビリテーション科 理学療法士 川添 聖太