こんにちは、理学療法士の中束宣仁です。
みなさん、現在の握力はどれくらいでしょうか?
誰でも1度は測ったことがあるかと思います。しかし、最近測ったという方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回、当院の理学療法士3名の握力を測定してみました。
まず測定の前に、なぜ握力を測定するのでしょうか。
なぜ、握力を測定する?
握力に関する研究や報告は様々あります。
2010年のWindら¹⁾の研究によると、若年者の筋力測定の結果、握力は肩関節、股関節、足関節すべての筋力と相関が強く、全般的な筋力をすばやく示せると報告しています。
2011年の池田ら²⁾の研究では、高齢者の握力の結果は歩行能力や立位バランス、全身的な筋力を反映していると報告しています。
このように握力の結果は、さまざな要因との関連性が報告されています。握力だけで判断することはありませんが、握力測定は比較的簡易で安全に行えます。身体の状態を把握する1つの指標としては、用いやすいものとなります。
また、握力はサルコペニアのチェック項目の1つともなっています。
サルコペニアと握力
サルコペニアとは、「加齢に伴う筋力の減少または老化に伴う筋肉量の減少」のことをいいます。
サルコペニアのチェック項目として、下腿周径、歩行速度、筋量測定などがあり、そのうちの1つとして握力測定があります。
握力とサルコペニアとの関連について、2019年の沢谷ら³⁾の研究ではサルコペニア群と非サルコペニア群との比較にて、握力と歩行速度に有意差を認めたと報告しています。
2019年のAWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)の発表では、握力の指標として男性28㎏未満、女性18㎏未満と定めています。
握力はあくまでいくつかあるチェック項目のうちの1つです。握力の結果だけで判断することはありませんが、サルコペニアのチェック項目としては比較的測定しやすいものとなります。
実際に測定しました
理学療法士K)男性23歳 運動:空手、ゴルフ
理学療法士N)男性32歳 運動:サッカー、フットサル
理学療法士S)男性25歳 運動:クライミング

結果はというと、
理学療法士K・・45㎏
理学療法士N・・34㎏
理学療法士S・・43㎏
この結果はどうなのでしょうか?
20代の2人が高いのでしょうか? それとも30代のNが低いのでしょうか?
日本ではスポーツ庁(以前は文部科学省)によって、小学生から高齢者まで幅広い年代を対象に体力・運動能力調査が行われています。握力はいくつかある運動テストの1つとして全年代に実施されています。

〇年代別の握力データ(スポーツ庁 体力・運動能力調査 令和元年度版より引用)
スタッフの結果を体力・運動能力調査のデータと照らし合わせてみると、理学療法士KとSは同年代と比較しても同等レベルであることがわかります、理学療法士Nは同年代との比較でも低い結果となりました。
この結果をうけ、理学療法士Nは上半身のトレーニングも始めたそうです。
みなさんも健康のために、まずは現在の”身体の状態を知る”ことから始めてみてはいかがでしょうか。
引用・参考
1)Wind AE et al:Is grip strength a predictor for total muscle strength in healthy children:adolescents,and young adult?,Eur J Pediatr,2010,169:281-287
2)池田望・他:地域在住女性高齢者の握力と身体機能との関係.理学療法学,2011,26(1):255-258
3)沢谷洋平・他:通所リハビリテーション利用者におけるサルコペニアの有病率とその特徴.理学療法学,2019,34(1):111-114
4)スポーツ庁 ホームページ:令和元年度体力・運動能力調査結果 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1421920_00001.htm