
理学療法士の佐藤です。
今回のブログでは野球の投球動作で肘関節の内側を痛めやすい原因についてお話しします。
野球は日本ではサッカーに並ぶ競技人口で、
世界では約3500万人の競技人口でスポーツの競技人口ランキングでは10位内に入るような人気のスポーツです。
プロの世界では、アメリカのメジャーリーグで活躍中のエンゼルス大谷翔平選手が現在有名ですね。
大谷選手はトミージョン手術と呼ばれる肘関節の内側の靭帯再建術を受けた怪我の経歴があります。
トップ選手でも悩む肘関節の痛みは野球の投手では非常に多い怪我です。
ボールを投げる投球動作で肘関節の内側を痛めるには理由があります。
投球動作ではボールに加速をつけるため体全体を大きくひねる動きが必要です。
体の捻りに伴って肘関節の内側が大きく伸ばされるようなストレスが加わるため肘関節を痛めやすくなります。

通常このストレスから守るために肘関節の靭帯や筋肉によって制御されていますが、必要以上のストレスがかかってしまったときに痛みとして出てしまうのです。
肘関節へストレスになりやすい原因には大きく分けて3つあります
- 投球フォームの乱れ
- 身体機能の不足
- オーバーワーク
1.投球フォームの乱れ
ボールを早く投げることのできる選手は「肩が強い」と表現されることがりますが、
実際にはボールを速く・遠くに投げるためには下半身の力と体幹の力をボールを持つ腕に伝える必要があります。
つまり投球動作は肩や肘に注目しがちですが、全身運動と言えます。
私たち理学療法士は投げる動作を観察し、効率的に動かせていない部分に対して指導を行い肘関節への負担を減らします。
投球動作を簡単に相分けすると
- ボールを振りかぶって片脚立ちする時期(ワインドアップ)
- 足を大きくステップし、骨盤〜体幹〜腕を大きくひねる推進時期(コッキング〜アクセラレーション)
- ステップした足で踏ん張りながら、ボールを離す時期(リリース〜フォロースルー)
たとえば、
・ワインドアップで片足立ちでしっかり上半身が支えられているか
・振りかぶった腕とボールの位置が不十分でないか
・投げる腕の軌道が両肩のラインよりも低い
・足をステップする前から体のひねりが始まってしまう
・ステップした足で踏ん張りきれずに折れてしまう
など、いくつかのチェックポイントが存在するため
投手と修正点と投げている感覚を確認しながら口頭やビデオで確認しながら修正を行います。
投球指導者がいない場合には投球指導を行います。
2.身体機能の乱れ
1.では投球フォームが重要であるとお話ししましたが、
指導を受けていながら、理想的なフォームにすることができない原因がある場合があります。
小学生レベルでは、基礎的な体力がついていない場合もあるため
下半身・体幹機能が不足している場合や、簡単な筋力トレーニングや下半身の力をボールに伝えるための体の使い方を指導します。
中学生レベルになると、二次成長期に重なり骨と筋肉の成長に差が出るために全身の可動域が不足してくることがあります。そのため、全身の筋肉のコンディショニングと柔軟性改善のためにストレッチを指導します。
今お話しした一例のため、当てはまらない場合もありますが、選手の身体機能を評価した上で必要な自主トレを指導して行きます。
3.オーバーワーク
問診では、オーバーワークになっていないかを必ず確認します。
小学生の軟式野球では、障害予防として投球制限のガイドラインが連盟からアナウンスされています。
投手・野手に関わらず
- 週に300球
- 日に70球
- 1日の練習時間は3時間まで
学童野球に関する投球数制限のガイドライン(2019 公益財団法人 全日本軟式野球連盟より)
小学生に限らず、中学、高校生でも競技レベルごとに投球制限が設けられています。
ガイドラインを参考に練習量の調整が必要な方にはアドバイスしています。
肘関節が投球動作で再び負担にならないように筋肉に再教育と筋力トレーニングを行います。
フォームの乱れがある場合は、肘関節に負担の少ないフォームができるように下半身・体幹の筋力トレーニングや体の動かし方を指導します。
競技復帰にあたっては、選手の目標(試合など)に向けて負荷量(投球数・投球距離・出力)をスケジュールしながらリハビリテーションを提供・指導しています。
ピッチングで肘関節に痛み・違和感があるときは、是非当院へ相談してみてください。
佐藤