こんにちは、理学療法士の中村です。

 

足関節捻挫・足関節外側靭帯損傷をされた患者さんから、

 

「固定って何がいいんですか?」 

   

というのをよく聞かれます。  

  

さまざまな整形外科医と働いてきましたが、固定の考え方は医師によって異なります。

 

これまでの経験、知人・友人のクリニックでの対応、ガイドラインなどをまとめてみると、

 

① 受傷後1週間はシーネ固定で荷重をかけない、松葉杖を使用、2週目からはサポーターを使用して荷重をかけていく。

  

② 受傷直後からテーピング固定で荷重をかける、松葉杖は痛みに応じて使用、2週目からはサポーターを使用して荷重をかけていく。

 

③受傷直後からサポーターで荷重をかける、松葉杖は痛みに応じて使用

 

の3パターンがあり、重症度に応じて固定法を変更することが多いようです。また、初回捻挫か繰り返しの捻挫かでも対応を工夫するところもあります。

 

サポーターもさまざまな種類があり、内側・外側にガードが入っている固定性の高いサポーターを用意している場合もあれば、簡易的な8の字のサポーター(アンクルバンド)を用意している場合もあります。

 

②と③は、Functional treatment(ファンクショナルトリートメント)と呼ばれる保存療法の1つで、受傷後早期からテーピングやサポーターを装着して足関節の内外反を制動したうえで足関節の底背屈運動を引き出し全荷重をかける治療となります。  

  

ちなみに、西東京かとう整形外科の加藤院長は、捻挫の重症度に関わらず骨折のない靭帯損傷は、受傷直後からテーピング固定(ホワイト)で荷重をかける、松葉杖は痛みに応じて使用、2週目は伸縮テーピング固定、3週目から簡易的な弾性包帯サポーター(アンクルバンド)を使用としています。テーピングの種類を段階的に変更するのが特徴で、Functional treatment になると思います。

  

さて、では、どの固定方法がいいのでしょうか。

  

シーネ固定の場合、安定性を得られる一方、一定期間、足関節を固定するため、浮腫や可動域制限、筋力低下が起こりやすくなります。

 

テーピング固定の場合、足関節の固定が最小限のため、可動域制限や筋力低下が起こりにくいです。

 

 

しかし、重症度が高く、強い痛みや腫れにより足関節中間位をとれない、疼痛回避歩行がある場合、テーピングでは固定力が不足する可能性が高くなります

  

また、テーピングは数時間ですぐに緩んでしまうため、巻き直しに通院する必要があります。通院ができない場合、軽症の場合は簡易的なサポーターで対応できますが、重症度が高い場合は固定性の高いサポーターが必要になるでしょう。

 

テーピング固定は皮膚障害が起こりやすく、特に夏場には注意が必要です。一度、皮膚障害が起こると、アンダーラップ、テープの種類を変えても皮膚障害が起こります。

  

足関節外側靭帯損傷の論文、ガイドラインの「固定」の部分を確認してみましょう。

 

Halabchi ら(2020)は、

  • 急性の足関節捻挫、特にグレードⅠおよびⅡの損傷の場合、早期からのモビライゼーションと足関節の機能的サポートが、硬性固定よりも優れている(レベル1)
  • グレードIIIの損傷の場合、膝下ギプスや半硬性装具を用いた短期間の固定(10日以内)が、疼痛や腫脹を軽減し、機能的な改善に有効であることを示すエビデンスもある(レベル2)

 

と述べています。

  

アメリカの理学療法士のクリニカルガイドライン(2021)では、

  • 急性期の足関節外側靭帯損傷患者に対し、装具やテーピングなどの外的サポートを使用し、患肢に徐々に体重をかけるように助言すべきである。推奨される外部支持具や歩行補助具の種類は、損傷の重症度、組織の治癒段階、適応される保護レベル、疼痛の程度、患者の希望に基づいて決定されるべきである(グレードA)。
  • 重傷度が高い場合は、半硬性装具から膝下ギプス固定を、受傷後最大10日間まで実施する(グレードA)。

とされています。

  

これらを踏まえて、さて、「固定って何がいいんですか?」 という質問に対しては、

 

  • 固定方法は、シーネ、テーピング、サポーターがありますが、初期固定の考え方は医師によって異なります。
  • 西東京かとう整形外科では捻挫の重症度に関わらず靭帯損傷はテーピング固定を行い、早期復帰のために初期からテーピング固定を行い荷重をかけていくFunctional treatmentという治療方法を実践しています。
  • 重症度が高く、強い痛みや腫れにより足関節中間位をとれない、疼痛回避歩行がある場合、テーピングでは固定力が不足します。初期固定でシーネ固定をご希望の場合は当院では実施していませんので他院を受診してください。
  • 複数回繰り返している捻挫、慢性的な足関節不安定については、理学療法士によるリハビリテーション、また、オーダーメイドのインソールが有効です。ご相談ください。

 

という回答になります。 

 

ご参考にしてください。

 

参考文献

Halabchi F, Hassabi M. Acute ankle sprain in athletes: Clinical aspects and algorithmic approach. World J Orthop. 2020 Dec 18;11(12):534-558.

Ankle Stability and MovementCoordination Impairments:Lateral Ankle Ligament Sprains Revision 2021

高尾昌人, 足関節ねんざ症候群 2020, 全日本病院出版会