変形性膝関節症の疫学・病態
変形性膝関節症とは、膝関節の関節軟骨がすり減り、痛みや腫れを引き起こし、膝の曲げ伸ばしの制限(可動域制限)とともに膝関節の変形が増加してくる疾患です。
日本では、全成人の24%(4人1人)が変形性膝関節症と診断され、60歳以上では、女性に多く発症する(男性:9.6%、女性:18.0%)と言われています。
原因としては、高齢、肥満、体重の急な増加、女性、膝関節の外傷の既往歴、膝関節に大きな負担がかかる動作(重労働)と多岐にわたります。
初期症状としては、歩き始めや立ち上がりの際に痛みを生じやすく、しばらく歩くと痛みが軽快または消失するのが特徴です。病状が進行するにつれて、膝関節の圧痛(押されると痛い)や腫れ、関節可動域制限、筋力の低下を生じ、体重がかかる時や歩く時の痛みが強くなっていきます。
歩きや階段の昇り降り(荷重時)に痛みが強くなってしまうことで、生活の質(QOL)の低下や日常生活活動(ADL)の低下を認めていきます。
治療方法は、保存療法が第一選択ですが、レントゲンにより膝関節の変形や痛みが強い場合やADLに制限がある場合は、手術療法が検討されます。手術の種類としては、骨の脛骨高位骨切り術(HTO)、膝関節単顆置換術(UKA)、人工膝関節全置換術(TKA)と様々な選択肢があります。

変形性膝関節症の理学療法評価
理学療法評価では、痛みの場所や程度・痛みが出現する動作の確認を行います。その他にも、膝の曲げ伸ばしの制限や、体幹・下肢の筋力、整形外科テスト、姿勢アライメント(O脚・X脚等)、歩行動作や階段昇降動作等の動作分析の評価を行います。また、膝関節の荷重時痛に伴い、日常生活活動にも支障が出るため、生活様式や自宅環境の問診も行っていきます。
膝関節は、膝のお皿(膝蓋骨)とももの骨(大腿骨)の間の膝蓋大腿関節と大腿骨とすねの骨(脛骨)の間の大腿脛骨関節の2つの関節(図)から構成されています。

膝関節の曲げ伸ばし運動では、大腿脛骨関節の運動と一緒に膝のお皿も仲良く動いてくれる事が大切になってくるため、膝蓋骨の動きが保たれているかの確認もしていきます。
膝関節の変形の進行やお尻の筋肉(中殿筋や大殿筋など)の筋力低下に伴って、歩いた時に膝関節が曲がった状態で外側に開きブレてしまう現象(外側スラスト)(図)が出現してくる場合もあり、膝関節の痛みに繋がってしまうため、歩行動作分析も実施していきます。

腿前の筋(大腿四頭筋)やお尻の筋(殿筋群)の筋力低下や膝関節のアライメントの他にも、全身の筋力や連動した体幹や下肢の運動、股関節や足関節の変形も膝の痛みに関与してくるため、併せて体幹・股関節や足関節・足部の変形の確認も行います。
普段履いている靴の確認も行い、必要に応じて足型や足サイズの計測も行っていきます。膝関節の内側に体重が多くかかり、歩くときに痛みを生じる場合などに、靴の中にインソールを入れて、体重のかかる位置を変化させることで、歩く時の症状緩和を図っていきます。
変形性膝関節症の理学療法の実際
病期やステージなどを考慮し、個々の機能障害に対して、適切な理学療法を行っていきます。
関節変形や痛みが少ない場合は、症状の軽減や膝関節の変形の進行予防する目的で、膝関節の曲げ伸ばしの可動域練習や関節モビライゼーション、大腿四頭筋や殿筋群・体幹の筋力トレーニング、膝関節に負担のかかりにくい動作指導や生活指導を行っていきます。また、膝関節の疼痛軽減には、体重の管理も重要です。BMIが25以上の場合は、減量についてもアドバイスをしていきます。
自宅で出来るトレーニングとしては、膝のお皿を動かす練習(図)や膝関節の可動域改善の運動や大腿四頭筋や大殿筋・中殿筋の筋力トレーニング(図)、体幹・下肢への体重の乗せ方や歩き方の練習(図)も行っていきます。
中等度の変形や歩く時や荷重時に膝関節の痛みがある場合は、可動域練習や筋力トレーニングに加えて、膝関節の負担や痛みの軽減目的で、杖などの補助具の使用、オーダーメイドインソールの作成も検討していきます。
(執筆:理学療法士 玉田)