シーバー病の疫学・病態

シーバー病は、1912年にジェームス・W・シーバーにより報告された踵骨(しょうこつ:かかとの骨)の骨端症で、スポーツを行う成長期の小児、8〜15歳の男児に多く発症します。骨端症の病名は、第1報告者となった当時の整形外科医の名前が由来となっています。

シーバー病は、体重がかかった時や運動後の踵の痛み、踵の圧痛が特徴です。片側だけでなく両側の発症も起こりえます。踵骨にはアキレス腱や足底腱膜が付着しており、同部位への持続的な牽引力や繰り返される踵への圧力などが発症の原因として考えられています(図)。

成長期は骨の成長と比較してアキレス腱の延長が遅いことも踵を強く牽引する要因の1つとなっています。

シーバー病の理学療法評価

立位時・動作時の足部の形状(アライメント)を裸足で評価します。足部過回内は踵骨が内側に傾いた状態で、アキレス腱・足底腱膜に負担がかかりやすい状態です(図)。姿勢・アライメントの評価後は、踵の内側・外側の圧痛、足関節の可動域、体幹やお尻の筋力、動作時の足部の形状、スポーツ動作などを評価します。

ステップ時の足部が内側につぶれる動作(過回内)、膝が内側に入る動作(Knee in)、足関節の制限やステップ時のつま先が外を向く動作(Toe out)などによって、アキレス腱や足底腱膜に負荷がかかります。これらの不適切な動作は、下肢の柔軟性低下、体幹やお尻の筋力低下、股関節のコントロール低下、足部の機能低下、扁平足などの足部の構造上の問題などが原因として考えられます。

身体機能の評価以外では、適正サイズ、靴の履き方、靴の選び方も評価します。足サイズよりも靴サイズが大きすぎる場合も、靴の中で足が不安定になり踵に負荷がかかる原因になります。小学生の場合、大きめの靴を購入することがあります。中敷のつま先の方にゴミが溜まる、足の指の跡が極端に手前にある場合は注意が必要です。

シーバー病の理学療法・リハビリ

練習量が多い場合は練習量の調整、疼痛が強い時期は安静、体重がかかる運動の制限、ふくらはぎ(下腿三頭筋)のストレッチなどが一般的に行われます。また、個々の原因に対して理学療法を行っていきます。

下肢の柔軟性低下に対してはストレッチ、体幹やお尻の筋力低下や足部の機能低下に対してはエクササイズ、股関節のコントロール低下に対しては動作練習を行います(図)。エクササイズは“効かせる筋トレ”ではなく、上手に身体を使い、正しいタイミングで目的となる筋肉がしっかり働くことが大切です。理学療法士が動作や筋肉の働きを確認しながら適切な動作を習得していきます。

小学生は初めて靴ひもタイプの靴を履きます。靴ひもタイプの靴を履き始めるこの時期に”足と靴のフィッティング”を覚えることは大切です。適正サイズ、靴の履き方、靴の選び方が適切でない場合は、「足と靴のフィッティング」を指導します。

踵への衝撃吸収力の向上、足部のアーチ機能を支えるために、状況に応じてインソールもご提案しています。

(執筆:理学療法士 中村 幸之進)