目次
シーバー病とは
シーバー病とは、踵骨の骨端線に過度な負荷がかかり、炎症を引き起こす疾患です。
スポーツを行っている成長期の子供に多く発症し、荷重時や運動時の踵の痛み、踵の圧痛や腫れなどが特徴です。
痛みが強い場合、子供は踵に体重のかけない歩き方をすることがあります。通常、歩く時は踵から着きますが、足底で着くようになります。
片側だけでなく両側に発症することもあります。
シーバー病の原因

シーバー病は、踵に過度な負荷が加わることで起こります。
レントゲンで踵骨骨端核に硬化像や分裂像が確認されることがありますが、レントゲンはあくまでも結果であり、踵に過度な負荷が加わる原因を特定することが大切です。
踵に過度な負荷が加わる原因には、①足の機能低下、②体幹・殿筋の機能低下、③良くない身体の使い方、④靴が合っていない、⑤オーバーワークがあります。
当院では、理学療法士が問診・身体評価にて、踵に過度な負荷が加わる原因を特定していきます。
原因① 足の機能低下
シーバー病の原因となる足の機能低下には、筋肉が硬い、足関節が硬い、浮趾(うきゆび)、足部の過回内、足趾の機能低下、があります。
筋肉が硬い

踵の骨にはアキレス腱や足底筋膜(足底腱膜)が付着しており、同部位への持続的な牽引力によって、踵に過度な負荷が加わります。
筋肉は腱いう組織となり、骨に繋がります。アキレス腱は下腿三頭筋というふくらはぎの筋肉の腱になります。
ふくらはぎの筋肉が硬くなることでアキレス腱を介して踵に負担がかかります。また、足底筋膜(足底腱膜)が硬くなることでも踵の負荷が増えます。
足関節が硬い

しゃがんだ時に踵が浮いてしまう、つま先が外を向いてしまう場合、足関節が硬い可能性があります。
足関節が硬いと、足底筋膜の緊張が高くなり、踵への負荷が増えます。
スポーツでは、パワーポジション、走る、ジャンプなど頻回にしゃがむ動作を繰り返します。
適切なしゃがむ動作は、股関節と膝関節が曲がると同時に、足関節の背屈(はいくつ)という動きが起こります。
足関節の背屈が正常に起こるためには、複数の関節の動きが必要です。
- 踵骨の回内
- 距骨の後方滑り
- ショパール関節の回内
- 第一中足骨の背屈
- 腓骨遠位の後上方滑り・近位の前上方滑り
これらの関節の動きが硬くなると、足関節の背屈の制限が起こり、踵への負荷が増えます。
関節の硬さは、過去の足関節捻挫が原因で起こることもあるため、既往歴の確認が大切です。
浮趾(うきゆび)

立位時や歩行時に、足の指が地面につかず浮き上がっている状態を浮趾(うきゆび)と呼びます。
浮趾は足趾機能の低下や変形により引き起こされることが多く、足踏みをすると足趾が浮いてくる、スクワットをすると足趾が浮いてくる傾向にあり、重心が後方になりやすく、踵への負荷が増えます。
足部の過回内

足部の過回内(かかいない)とは、踵が過度に内側に倒れ、内側縦アーチが低下している状態です。
後方から足部を観察した場合、第5足趾・第4足趾が見えることもあります(Toe many toes sign)。
立位で生じている場合もあれば、動作時に足部の過回内が起こることもあります。

足部の過回内は、筋力の低下(後脛骨筋の筋力低下など)、アーチの低下、X脚や扁平足などの構造的な問題、全身関節弛緩性、良くない身体の使い方、過体重などによって起こります。
足部の過回内があると、踵への負荷が増えるだけでなく、膝が内側に入る動作(Knee-in ニーイン)になりやすく、膝への負荷も増えます。

足趾機能の低下
足の指、足趾(そくし)は歩行時に地面を蹴るとき、バランスをとるときにとても重要です。
足趾を握る、足趾を開く、母趾と小趾を別々に動かすといった機能が低下すると、アーチの低下、バランス低下、後方重心になりやすく、踵への負荷が増えます。

原因② 体幹・股関節の機能低下

体幹・股関節の機能が低下すると、動作時に、骨盤の前傾や回旋が生じ、膝が内側に入る動作(Knee -in )を引き起こすとともに足部の過回内が起こり、踵が過度に内側に倒れ、踵への負荷が増えます。
原因③ 良くない身体の使い方
スポーツ動作では、スクワットの姿勢、パワーポジションが基本姿勢になります。
パワーポジションは、股関節・膝関節・足関節の協調した動きが必要となります。

股関節がうまく使えていない、膝関節優位のパワーポジション、腰がそるパワーポジションは、足部が過回内になりやすく、膝や踵への負荷が増えます。
パワーポジションから、身体をコントロールできることも大切です。パワーポジションから左右に動かすと膝が内側に入るは、足部過回内になりやすく、足部および踵への負担が増えます。
パワーポジションから踵を浮かすことができない場合、前足部への荷重がうまく行えていないため、足部および踵への負担が増える傾向にあります。
原因④ 靴が合っていない
踵に負荷が増える原因として、身体機能以外に
靴のサイズと足のサイズが合っていない、靴を正しく履けていない場合、足の機能低下を引き起こす原因となります。
大きすぎる靴を履いている場合、足が靴の中で動いてしまい、不安定な状態となってしまいます。
また、靴紐を正しく結べていない場合も同様に、不安定な状態を引き起こします。
原因⑤ オーバーワーク
踵に負荷が増える原因として、練習量の増加があります。
練習量増加のタイミングとして、試合前の集中練習、合宿、強豪チームへの移籍などさまざまです。
成長期の子供の場合、発達・発育は個人差があり、運動に対してどれだけ耐えられるかという能力も個人差があります。
オーバーワークが原因の場合、個人に合った練習量の調整が大切になります。
シーバー病の身体評価
立位姿勢・足部アライメント、触診、下肢の関節可動域検査、体幹や殿筋群などの筋力評価、スポーツ動作などを評価します。

足首が硬い場合、「筋肉の硬さ」と「関節の硬さ」を評価します。足関節の背屈(はいくつ)は、歩行では約10°、ランニングでは 30°が必要とされています。階段昇降やスクワット、スクワットなどではより大きな足関節背屈が求められます。
股関節・膝関節の柔軟性も重要です。足関節の柔軟性と同時に評価します。
体幹・股関節の評価の1つに、ヒップアブダクションテストがあります。体幹・股関節機能が低下していると、骨盤が後ろにひっくり返り、下肢を挙げた状態を維持できなくなります。

スポーツ動作の評価では、パワーポジション(スクワット)、シングルスクワット、ランジ(前方ステップ)、クロスステップなどを評価します。
シューズを履いた状態と裸足の両方で評価することが大切です。
シングルスクワットの安定はとても重要です。足部、膝関節、股関節を評価します。

良くない例

この図では、足部過回内、ニーイン動作、膝関節優位のスクワット、腰がそるスクワットをしています。

この図では、左のランジ(前方ステップ)では、ニーイン動作、右肩下がりが確認できます。右のクロスステップでは、軸足が安定していません。
当院では、足サイズ、フットプリント、靴のフィッティングの確認も行っています。


このフットプリントは左右ともに、第4・5足趾が白くなっており、浮趾を表しています。また、踵の色が濃くなっており後方重心を示唆しています。
シーバー病のリハビリ・理学療法・インソール
痛みが強い時期は、安静、また、体重がかかる運動を制限し、組織への負担を減らします。
痛みの軽減のために、マイクロカレント、ハイボルテージといった物理療法を行います。
踵に負荷がかかっている原因を判断し、理学療法士が一人ひとりに合った個別の治療プログラムを行なっていきます。
柔軟性が低下している場合、理学療法士が徒手的にマッサージ、ストレッチ、筋膜リリースなどを行います。また、自宅でできるストレッチ・体操を指導いたします。
体幹・股関節の機能低下がある場合、エクササイズを行なっていきます。小学生の場合、完璧を求めるのではなく、7割を目標にエクササイズを行なっていきます。
足部アライメントの問題やつま先を外に向けた接地などの不適切な動作の場合、動作修正のためのエクササイズを行います。身体機能、スポーツ特性に合わせたエクササイズを選択していきます。
エクササイズは“効かせる筋トレ”ではなく、上手に身体を使い、正しいタイミングで目的となる筋肉がしっかり働くことが大切です。
靴の正しい履き方
小学生の場合、靴が正しく履けていないことがとても多いです。当院では、靴の正しい履き方も指導します。


インソール
シーバー病に対してインソール(保険外診療)が効果的な場合があります
インソールは、構造的に足部の過回内が起こっている場合、通常のリハビリテーションでは良くならない場合、早く良くしたいという場合に限り、作製をご提案しています。