外傷性頚部症候群とは
何らかの外力が頚椎に加わり、頸部痛などの症状が起きた状態をいいます。
以前は、"むち打ち"と表現されていましたが、現在では"外傷性頚部症候群" または "頚椎捻挫”と診断名がつくことが多いです。
受傷の理由は、交通事故による受傷、コンタクトスポーツ時の受傷、階段からの転落など、さまざまです。
受傷した理由によって、損傷を受ける部位は異なります。例えば、車に乗車中に後方から追突された場合、まず、身体が前方に押し出されシートベルドで制動されます。結果として、頭部が後方に残ります。次に、頭部・頚椎が後方に反り返り、最後に反動で前方に曲がります。この自分では意識していない過度な動作によって頚椎の靭帯、関節、筋などに損傷が起こります。
外傷性頚部症候群の症状は、頸部痛、筋スパズム、めまい、頭痛、上肢の感覚異常・疼痛などがあり、多くの患者様はいくつかの症状を有しています。
症状を改善させるためには、1つ1つの問題点・関連性を評価し、治療していくことが必要です。
外傷性頸部症候群の理学療法として、疼痛コントロール、エクササイズ・運動再学習、姿勢再学習エクササイズ、関節モビライゼーション、日常生活指導などがあります。
外傷性頚部症候群の理学療法
外傷性頚部症候群の理学療法には、疼痛コントロール、ストレッチ・関節モビライゼーション、運動療法、姿勢・動作修正エクササイズなどがあります。
理学療法士が個々の患者様の身体・状態を評価し、機能障害の要因を判断し、治療内容を調整していきます。
疼痛コントロール
受傷後数日間は、強い疼痛のために頸部を動かすことができません。痛みのために患部を動かさないようにしている姿勢・動作を、”疼痛回避姿勢・動作”と呼びます。
この場合、積極的に頸部を動かすことはせず、損傷部位の改善を妨げないように、疼痛コントロールのための投薬・物理療法、また、患部外の運動を行っていきます。
症状が安定してきたら、セラピストによる徒手牽引を行い疼痛軽減を図っていきます。外傷による頸部痛の場合、事前に理学療法士が上位頚椎の不安定性がないか評価します。
当院では、牽引機器による牽引は行なっておりません。上位頚椎の靱帯損傷がある場合、牽引機器による頚部の全体的な牽引によって症状が増悪します。当院では頚部の牽引は知識・技術・経験を備えた理学療法士による徒手牽引を用いています。
運動療法
リハビリテーション開始時は、患者様自身が動かしていくことが必要です。痛みがでない範囲で、ゆっくり首、肩周りを動かしていきます。首を動かすことができない場合は、肩周りの運動から始めていきます。
頚椎深層筋群の筋力低下、頭と頚部を正しい位置に戻せない感覚異常が起こっている場合、筋力の改善、また、感覚を修正するためのエクササイズも行います。
姿勢・動作修正エクササイズ
受傷後、多くの患者様は”固めた姿勢”や”頭部が前方にでた姿勢”をしています。
急性期では、痛みがでないように痛みを避けた姿勢や動作をすることがあります。これを疼痛回避姿勢、疼痛回避動作といいます。
疼痛回避姿勢・動作は、損傷部位に負担をかけずに治癒を促進するために必要です。理学療法士から疼痛回避動作を指導する場合もあります。
疼痛回避姿勢・動作は、損傷部位の改善に伴い、少しずつ修正していきます。
損傷部位が改善しているにもかかわらず疼痛回避姿勢・動作を継続していると、二次的な機能障害を引き起こしたり、慢性疼痛へ移行してしまいます。
理学療法士が適切なタイミングで、姿勢・動作の再学習を促していきます。
ストレッチ・関節モビライゼーション
疼痛が軽減し、頚椎を動かせるようになってきたら、個々の患者様の状態、問題点に応じたアプローチを実施していきます。
関節可動域が残存している場合、理学療法士が疼痛に注意しながら頚部を動かしていきます。
*当院では、首の骨を鳴らすなどの手技は行いません。
日常生活指導
外傷性頚部症候群のガイドラインでは、重篤な症状(脱臼、骨折など)がない場合”通常の生活をする”ことを推奨しています。
痛みは良くなってくるので、普段の生活をすることが大切です。